計画艦性能予想: 番外編 真のイギリス大型巡洋艦を求めて

 イギリス初の大型巡洋艦のDefenceの史実性の無さにブチギレているので、素人なりに「史実的にいくらかマシ」な大型巡洋艦を創作してみるというのがこの記事の趣旨です。そのため計画艦予想シリーズではありますが番外編と称してナンバリングからは外しています。

 

1. Defence代艦の候補探し

 せっかく作るのであればDefenceと同じティア10で通用するものを作ってみたい。という条件も付けくわえて大型巡洋艦の計画を探すことにします。

 まずイギリスにおける大型巡洋艦計画として有名なものとしては1930年頃に検討された所謂“Lillicrap Design”と呼ばれるものがあります。これは305mm砲を6門積んだ小型戦艦みたいなもので、設計時期的にもドイツのポケット戦艦を意識したものであると思われます。ただ速力が30ノットしかなかったり、排水量がそこまで大きくなかったり(2万トンとかその程度)で、どれだけ頑張って性能を盛ってもティア9に届かないぐらいの程度です。おそらくこの計画案は将来的にはティア7あたりで実装されそうな気がするので、今回は没という結果に。

 ほかに候補として考えられるのは1938~39年あたりの大型巡洋艦の計画群です。WoWSでの”Drake”、”Goliath”、”Gibraltar”のモチーフで主に234mm砲を採用していることが特徴ですが、これらのほかにも305mm6門を搭載したものも検討されていたようで、実装候補としてはかなり有力なものとなっています。先述の“Lillicrap Design”と比較してもこちらのほうが10年近く新しい設計なのもあって、高ティア巡洋艦としてはこちらのほうが適任であるといえるでしょう。しかしながらこれでもやはり頑張ってティア9、無難にティア8に収まる程度でしかなく、バケモノぞろいのティア10に突っ込むのはかなり厳しいものがあります。

 こうして消去法をとった結果、最後に残ったのが…
まさかのヴァンガード級戦艦原案だったのでした。

 

 

2. ヴァンガード原案を夢想する

 ヴァンガードと言えば大英帝国最後の戦艦として有名ですが、その思想的源流をたどってみると、もとは極東の某島国が持つ重巡洋艦に対抗するための “fully-armoured battlecruiser(重装甲巡洋戦艦)” だったらしいということが判明しています。

 それ以上の情報は少なくとも私は知らないのですが、おそらくカレイジャス級R級から381mm砲をyoinkしてくるつもりであっただろうことは容易に予想できます。さらに日本の重巡に対抗するともなればそれなりの速力は要求されるでしょうし、超甲巡を意識してそれなりの装甲を備える必要もあります。

 現実では高速戦艦として完成していますが、より「巡洋戦艦」の要素が強くなればティア10巡洋艦として相応しいものができるのではないでしょうか。筆者が用意した要求性能は以下の通りです。

・381mm砲を6門程度搭載すること
・速力は32ノット以上とすること
・対305mm砲弾防御を施すこと(限定的)
・費用を抑えるため排水量をなるべく抑えること

 なお、創作にあたってはより精度を高めるべく”Springsharp”と呼ばれる軍艦設計に特化したシミュレーションソフトを使用しました。

 このソフトであれば入力した数値から排水量や装甲重量は勿論のこと、主機出力や航洋性、建造費用まで計算してくれるので、かなり本格的な架空艦制作を行うことができます。

 

3. 本格的設計の開始

3.1 船体寸法の策定

 ここは非常に大雑把にいきます。他の大型巡洋艦の例を参考に、
水線長240m/全幅30m/喫水10m
として設定。

すると、もうこの時点で通常排水量が計算されています。その数値、まさかの4万トン弱。これは下の“Block coefficent (方形計数)”の数値が大きいからで、この数値を小さくすることで排水量を減らすことができます。ここを0.495にまで減らした結果、基準35000トンにまで減らすことができました。

 

3.2 船体形状の策定

 次は船体形状を決めていきます。数値によって上の側面図の見た目が変化するので非常にわかりやすくなっているのが素晴らしいところです。

 イギリス艦らしくここは平甲板型(flush deck)を選択し、同時代の大型艦(ライオン級等)と同様にトランサム・スターンを採用。戦訓から艦首にシアーをつけることにしました。これにより全長が決定され、その数値は243mとなりました。いい感じですね。

 

3.3 兵装の配置

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 ここまで進んだところで待望の兵装決めです。主砲門数と口径、年式に砲の形式、一門当たりの砲弾数、砲弾重量、主砲基数に砲塔の形式まですべて自由に決めることができますが、あくまでも史実をベースとしているのでここは42口径381mm砲のデータをなるべく正確に再現します。
 副砲、対空砲も同様のやり方で配置していきます。なお、副砲はいつもの133mm砲、対空砲はかの有名な40mmポンポン砲を載せることにしました。オーソドックスなイギリス式構成ですね。

 

3.4 装甲配置

 兵装を決めたら次は装甲配置です。ここのパートが一番面白くてわかりにくい箇所だったので大苦戦しましたが、何とか形にすることができました。

 要求性能では対305mm防御を目標としていたのでそれをもとに作りましたが、さすがに排水量が肥大化するので主装甲厚を少し削り、当初数値の254mm/10インチから241mm/9.5インチに減少させました。

 参考までにいうと、アラスカ級の主砲弾の距離3万ヤード(約27km)での貫通力が231mmらしい(navweaps)ので、二次大戦中の交戦距離でもギリギリ耐えれる数値となっています。本当はもう少し削りたかったのですが、当時のイギリス大型艦が傾斜装甲ではなく垂直装甲を採用していたことをふまえて少し欲張ってみました。

 

3.5 主機関の策定

 最後は機関の設定(速力の設定)です。目標速力は33ノット程度でしたが、どうせイギリス海軍のことなので32.5ノットほどで妥協しそうです。巡航速度は12ノット、スクリュー数は4軸です。そうするとこの速力を出すために必要な出力が自動的に計算されます。「この排水量でnノット出すためにはどのくらいの出力がいるか」を知りたいときに物凄く参考になりそうです。
 エンジンはこの時代の主流、重油仕様のギアード蒸気タービンです。試していませんがディーゼルだとどのくらい変わってくるんでしょうね。

 

3.6 性能結果

 こうして気の遠くなるような諸元入力を経てはじめて性能結果が出力され、レポートとして保存することが可能になります。基準排水量34627トン、満載37027トン。非常に理想的ですし、居住区画の広さが評価されたのは非常にうれしいところです。さて、肝心の建造費用は…

およそ1700万ポンド

 

ちなみに史実での戦艦ヴァンガードの建造費用が…

…およそ1150万ポンド

 

…あっれぇ?

 

 

4. 基本的な実装コンセプト決定

 謎に高い建造費用は予算組むときにうまく誤魔化すとして、いよいよWoWSに「どう落とし込むか」という段階に移行します。今回の基本的なコンセプトは

「レーダー付イギリス大型艦の復活」

です。このコンセプトはイギリス戦艦ツリーを実装する際に公式に検討されていたようなのですが、残念ながら本実装は叶いませんでした。これを軸としつつ、過去実装された様々なイギリス艦艇のギミックを盛り込んだものを作りたいと思います。

 

4.1 継戦能力

 先ほどの船体設計を通じて、本艦の満載排水量は37,027トンであることが判明しています。WoWSにおける艦艇のHPは満載排水量をもとにして算出されているので、独自に導出した回帰式を使用しておおよその体力を割り出します。そうして出たHPがおよそ64,500。大型巡洋艦としては並ではありますが、LionやVanguardの例を見るにバイタルパートは露出したものになると思われるため、なにかしらの救済措置が必要になってきます。
 主な解決方法としては所謂超回復がありますが、今回はそれを採用せず、T8までのイギリス戦艦第一ツリーの修理班の派生型(船体75%、VP50%, CT60s)を持たせることにします。これは似たような性能を持つSevastopolとの性能被りを防ぐためです。

 

4.2 主砲性能

 イギリス戦艦が長く使ってきた381mm砲を使用しています。ここでイギリス軽巡のギミック「砲弾は跳弾優遇APのみ、高速射性」を盛り込むことで、わずか6門しかない主砲の火力を向上させることにします。使用する砲弾はVanguardのAP(初速804m/s)をベースにしたうえで、高ティアイギリス軽巡と同様の跳弾優遇を与えます。装填時間はだいたい18秒ぐらいでしょうか。本当に匙加減です。

 ここまでやるとさすがにバランスが崩壊する可能性が高いことから、主砲精度に関してはシュペー散布σ2.2ぐらいで妥協します。主砲射界が劣悪な可能性もあるためそちらも考慮する必要性があります(今回は割愛)。

 

4.3 対空性能

 高ティアイギリス戦艦の特徴でもある「クソ雑魚長対空、強めの中距離」を引き継ぐ形です。原案ではポンポン砲6基しか積んでおらず明確に対空能力が不足していることから、さらなる対空砲の増強が望まれます。本来であれば40mm Bofors Mk VIやSTAAGを持ってくるのが常識だとは思いますが、筆者の性癖好みにより以下の構成になりました。

長距離対空砲: 8x2 133mm/50 QF RP10 Mk I
中距離対空砲: 18x2 40mm/56 Bofors Mk IV "Hazemeyer"
近距離対空砲: 14x2 20mm Oerlikon Mk V

 この”Hazemeyer”なる対空砲は一部のオランダ巡洋艦やIncomparableに搭載されているもので、単に名前の響きがカッコいいのとレーダー引っ付いてるのがカッコいいからという理由で採用しています。18基ほど搭載したためその継続ダメージは700弱にまで達します。さすがにやりすぎたかもしれません。まあいいか。

 

4.4 機動性

 速力は32.5ノットで固定しますが、ここでも「イギリス軽巡式加速」+「短い転舵所要時間」という2つの大きなギミックを採用します。旋回半径は船体のLB比を参考にしておよそ850m程度、転舵所要時間は10.9秒ほどとします。ThundererやVanguardと比べると控えめな所要時間ですが、これはただでさえ転舵UG搭載が主流になる可能性が高いのに素までよかったらバランスブレイカーになってしまうこと考慮してのリミッターです。

 

4.5 隠蔽性

 「大型艦の癖に高隠蔽」というのは多くのイギリス艦艇が持つ特徴ですが、あえてこれに関しては常識的値にすることで逆差別化を図ります。最近の被発見距離インフレのアンチテーゼ的意味合いもありますが、大型巡洋艦の中でも平均的な性能を持つAlaskaに倣い、素で15.2km、特化すれば12.3km程度に設定すればいい塩梅ではないでしょうか。航空隠蔽もそれに準じた距離にします。

 

4.6 消耗品の構成

 本艦の最大のコンセプトはレーダーの搭載なので、その存在感をなるべく薄くしないためにも「応急工作班」「修理班」「レーダー」の3種のみという最低限のラインナップで済ませる方針です。

 このレーダーは当初10kmレーダーを想定していましたが、総合的な性能を鑑みて射程12kmの短時間レーダー(Brisbane相当)を使用することにしました。自力での対駆逐能力が優秀ならともかく、上述の主砲性能であればそこまでOPにはなりえないかと思います。

 

5. 艦名の決定

 この記事も大詰めを迎えたところで、地味に重要なプロセスである艦名の選定に入ります。巡洋戦艦だからということもあって過去の装甲巡洋艦やInなんとかbleシリーズから取ってくるという選択もありましたが、レナウン級と類似している事、R級戦艦の主砲を流用する可能性が高いだろうという事から鑑みて”R”から始まる英単語から取ることにしました。

Reprisal: 「報復」の意。R級戦艦のネームシップ ”Revenge”の類義です。
Reverie:  「夢想」の意。この艦艇が概ね架空で出来ていることから。
Ravage: 「破壊」の意。なんか文字数が短い気がする。まあいいか。
Resistance: 「反抗」の意。R級戦艦の未成艦からの流用です。
Radiance:  「光輝」の意。偉大な艦艇というのは輝いて見えるものだヨ

今回は語感の良さから”Reprisal”を採用しました。

 

6. 最終性能

HMS Reprisal, Tier X

HP – 64500. 末端装甲 - 25 mm.
水雷防御 - 25 %. 火災時間 - 60 s.

主兵装 - 3x2 381 mm. 射程 - 17.8 km.
APダメージ - 11700. 初速 - 804 m/s.
装填時間 - 18.0 s. 旋回速度 - 5.5 °/s. 最大水平散布界 - 198 m. σ値 – 2.20.

副兵装:
8x2 133.0 mm, 射程  - 7.3 km.
HEダメージ – 1900. 火災発生率 – 8%. 初速 - 814 m/s

対空兵装: 8x2 133.0 mm., 18x2 40.0 mm., 14x2 20.0 mm.
短距離: 秒間ダメージ - 186, 射程 - 2.0 km;
中距離: 秒間ダメージ - 700, 射程 - 3.5 km;
長距離: 秒間ダメージ - 81, 射程 - 6.0 km;
爆発数 - 4, 爆発ダメージ - 1610

最大速力 - 32.5 kt. 旋回半径 - 850 m. 転舵所要時間 – 10.9 s. 
水上被発見距離 – 15.2 km. 航空被発見距離 – 9.2 km

消耗品:
1 slot - 応急工作班 (作動時間 5 s; CT 60 s)
2 slot - 修理班 (作動時間 28 s; 秒間回復量 322.5; CT 60 s; 回数 3)
3 slot - 警戒レーダー (作動時間 – 20 s; 有効範囲 – 12.0 km; CT – 120 s; 回数 2)